差圧式流量計
1,原理
流体が流れている管路に絞りを設けて、圧力損失を故意に発生させます。絞りにより発生する前後の圧力差(差圧)を検出して流量を検出します。絞り流量計とも呼ばれます。 絞りの形状からは、オリフィス、ノズル、ベンチュリ管の三種類に分類されますが、構造が単純なオリフィスが最も多く使われています。 フローノズルは、同心オリフィスのエッジ部を下流側へ押し出し、スロート状にしたもので、高温高速流体の測定に適します。また多少の固形物が含まれている液体にも使用できます。 ベンチュリ管は、管を絞り込んだ後緩やかに拡大したもので、オリフィスやフローノズルに比較し構造が複雑かつフランジ接続となるため高価となるが、泥等の沈殿物が生じないこと、圧力損失が小さい等の特徴を生かして、原水や工業用水の測定等によく使われます。 測定原理は、ベルヌーイの式によるもので原理的に非常に明快で、条件さえ整えればかなり高い精度での検出が期待できます。 下図にオリフィス式差圧流量計の概略図を示します。
3D モデル
オリフィスプレート:ラジアスタップ(1D・1/2Dタップ)・・・FK-OP-STD150
オリフィスリングアッセンブリー:コーナータップ・・・FK-OR-STD150
構造図135°断面
オリフィスの上流側、下流側に設けた圧力タップでの圧力をP₁、P₂とすると、ベルヌーイのエネルギー保存則により \[\small \frac{v₁^2}{2g}+\frac{P₁}{ρ₁g}+z₁=\frac{v₂^2}{2g}+\frac{P₂}{ρ₂g}+z=const (1)\]
v₁,v₂:断面1,2における流線上の流速
z₁,z₂:考慮した流線の断面1,2における基準面からの高さ
配管が水平で、非圧縮性流体の場合には、ρ₁=ρ₂=ρ なので式(1)は単純化されて
\[\small \frac{v₁^2}{2}+\frac{P₁}{ρ}=\frac{v₂^2}{2}+\frac{P₂}{ρ} (2)\]
断面1での流れの断面積(管路の断面積にほぼ等しくなります)をA₁、断面2での流れの断面積(オリフィスの穴より少し絞られますのでオリフィス穴よりやや小さい面積になります)をA₂とすると、連続の式から
\[\small v₁A₁=v₂A₂ (3)\]
式 (2)、(3)より体積流量qは
\[\small q=A₂\sqrt{\frac{Δp}{ρ(1-(\frac{A₂}{A₁})^2)}} (4)\]
質量流量qmは
\[\small β^2=(\frac{A₂}{A₁})\]
と置き換えると
\[\small qm=ρq=A₂\sqrt{\frac{2ρΔp}{1-β^4}} (5)\]
が得られます。
すなわち体積流量または質量流量は、オリフィス上下流の差圧 ΔP=p₁-p₂ の平方根に比例します。
管径、絞りの径をそれぞれD,dとすると、β=d/D となりますが、このβを絞り径比といいます。
実際の流量測定では、絞り部の最小断面積A₂を製作に求めることは難しいので、絞り部の面積『π/4×d²』を使用します。
また、流体の粘性による影響も考慮しなければならないので、理論式(5)の代わりに次式のように表されます。
\[\small qm=C\frac{π}{4}d^2\sqrt{\frac{2ρΔp}{1-β^4}} (6)\]
係数Cは流出係数と呼ばれる実験係数です。絞りの形状により異なります。他の方法で正確な流量を測定した結果より、理論値との比として求められる数値です。
オリフィスを設置する際には直管部が必要になります。又流体の種類によってオリフィスや指示計の設置場所に注意が必要となりますのでご注意ください。必要直管部長さ,取付場所の案内を下記にご案内致します。
絞り機構種類 | タップ方式 | 絞り機構形状 | 特長 |
---|---|---|---|
オリフィス | D-D/2 | オリフィスプレート | 構造が単純為製作性が良く、短納期、低価格での対応が可能です。 |
オリフィスフランジ | 単体での使用口径は150A以上となります。 | ||
ベナー | オリフィスプレート | ラインの定格に合せる事で幅広い温度、圧力での使用が可能です。プレートの差替えが可能です。 | |
フランジ | オリフィスフランジ | 大口径、高圧用は価格が高くなります。 | |
オリフィスロック | フランジ挟み込みタイプは交換作業が容易となります。 | ||
オリフィスリング | 一体構造の為、リークの危険性が少なくなります。一体削り出しの為、価格は高くなります。 | ||
コーナー | オリフィスリング | プレートの差し替えでの対応が可能となり交換・取付作業が容易となります。 | |
フローノズル | コーナー | ISAノズル | フランジ挟み込みタイプとなり、交換作業が容易となります。 |
長円ノズル | 構造上高強度となりますので、耐久性が高く、高温、高圧5バでの使用が可能となります。 | ||
D-D/2 | 長円ノズル | 構造が複雑となりますので価格は高くなります。 | |
フローノズル | 圧力損失がオリフィス、ノズルより小さく、上・下流の直管部が短くても測定可能です。 | ||
フローノズル | 製作方法により幅広い温度、圧力での使用が可能です。構造が複雑となりますので、価格は高くなります。 | ||
ベンチュリ管 | 錐抜き、旋削、板金 | 圧力損失がオリフィス、ノズルより小さく、上・下流の直管部が短くても測定可能です。 | |
製作方法により幅広い温度、圧力での使用が可能です。 | |||
構造が複雑となりますので、価格は高くなります。 |
2,特徴
長所
(1)絞り部の形状を正確に作成すれば、実際の流体を流して校正を行う必要がありません。JISなどで規格が決められています『JIS Z 8762』
(2)特にオリフィスを使用した場合は、構造が単純で価格は安価です。
(3)可動部が無く、保守が容易です。
(4)適用可能な流体は、液体や気体、蒸気などいろいろな流体に対応可能です。
短所
(1)流速分布の影響を受けるので、絞りの前後にかなり長い直管長を必要とします。
(2)オリフィスのエッジ部(縁部)の摩耗等の問題があり、固形物を含む液体等への使用は適していません。
(3)一般的に圧力損失が発生します。とくにオリフィスは圧力損失が大きくなります。ベンチュリ管の場合は比較的圧力損失は小さいですが、価格は高くなります。
(4)流体の中にゴミや錆などが混入すると、圧力を取り出す部分が詰まり、正しく計測されない場合が有ります。
(5)流量は差圧の平方根に比例するので、実質的な測定範囲を広くとることができません。この測定範囲(レンジアビリティ)は比較的小さく、1:4程度で使用される場合が多いです。